【この曲を聴け!】PYRAMIDOS -「Mastika」

世界へ羽ばたくジプシーソングの快作

ライブハウスシーンで高い人気を誇るジプシーバンド「PYRAMIDOS」。
彼らのCDが発売されるというニュースを聞いた時は驚いた。何故なら彼らは基本的にはカヴァーバンドなので、CDやDVDの製作の話は無いだろうと思っていたのだ。だがこの夏、既に著作権の切れているトラッドソングを中心とした6曲入りのCDが、めでたく発売となったのである。

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いざ聴いてみると、思っていたよりもずっと質が高くて驚いた。日本語のパートが無ければ、普通に中東のジプシーバンドの音源だと言って通じる内容だ。元々しっかりした演奏力を持ったバンドだが、CD化に伴って特にボーカルパートのレコーディングには相当に力を入れたであろうことが伺える。

M2の「opa nina」やM3「chiculata」などは普段のライブで聴くものよりも断然ボーカル、コーラスが素晴らしい。日本人がカナでルビをふった外国語で唄っている感がまるでない。恐らく発音の部分においてもかなり正確な表現を目指したものと思われる。その他、各インストゥルメンタルの音も力の入った演奏が分離感良くミックスされていて気持ちがいい。

PYRAMIDOSは、前身バンドである「情熱地獄とピラミッドス」の時から生粋のライブバンドだった。彼らの真骨頂はずっとライブにあった。コミカルかつゆるいMC、コント仕立ての物販宣伝、ステージもフロアも関係なく動き回るメンバーたち、そういった要素は間違いなくPYRAMIDOSの魅力を構成する重要なピースである。

今回それらの要素を省いた「音だけのPYRAMIDOS」という、我々がこれまで知らなかった形でのアプローチを提示されて最初は若干戸惑ったものの、聴いてみたらアラ不思議、全然楽しめる。

M5の「fire」あたりからは彼らなりのコミカルな要素も感じ取ることができるし、何よりもまずトラッドソングを現地人を楽しませられるクオリティで演奏しきっている面が素晴らしい。実際中東方面へのツアーも経験している彼ら。当然これからもまた行くだろうし、その際に現地人に聴いてもらえるものを目指した録音であることは間違いないだろう。

中東のみならず、欧米も日本の音楽も丸ごと飲み込んでジプシーミュージックに昇華するPYRAMIDOSの手法。彼らは今後、文字通り世界を相手に活躍していく尖兵となるだろう。国内でもサマーソニック出演など、経歴に箔が付いてきている。こういうバンドに世間の注目が集まるようになったことは、素直に喜ぶべき世相の変化だろう。

Pyramidos(ピラミッドス)@pyramidosjp – Twitter