唱撃 其の参 ~今夜は、いい歌ばっかり聴きたいの~@高円寺U-hA(2016.09.02)

「いい歌ばっかり聴きたい」という、なかなか不敵な自信に満ちたタイトルを付けてしまったけれども、看板に偽りのない内容になり、私自身、いちリスナーとして大満足のイベントだった。

宮国英仁

一番手の宮国英仁氏は、私にとって特に付き合いの長いミュージシャンである。これまでも「はぐレ企画」のイベントに天国として度々出演していただいたが、ソロで出ていただくのは意外なことに今回が初めてだった。

天国で見せるエキセントリックな姿があまりにも強烈なので、フォークシンガー然とした佇まいを見せる彼の姿にギャップを覚える人も少なくないかもしれない。とはいえ、天国でも見せる彼独特のシニカルな作風はソロでも健在。ただの「良い歌い手」に留まらない、滲み出る個(あえてアクと呼んでもいいが)を実感したライブだった。

もちろん歌い手としての力量も十二分に見せてもらった。「のら」のようなコロコロ表情を変える歌い方も面白いし、最後に歌った「道標」のように沖縄を感じさせる歌では、余人には出しえない余韻の残る歌声に魅了された。

宮国英仁(@3892hidehito)- Twitter

海月ひかり

続いては海月ひかり。彼女はこの日ノッていた。間違いなくノッていた。ライブの時は基本的にテンションの高い人であることは、一度でも彼女のライブを観たことのある人ならばご存じかと思うが、この日は湧き上がるものが抑えきれないような、エネルギーに満ちたライブだった。MCも絶好調。

今日のライブを観て改めて思ったことがある。この人の歌はこの人自身だ。歌詞に人生経験を反映させているという意味ではない。海月ひかりという人間存在が歌として放出されている。海月ひかりが歌になり、歌が海月ひかりとなって降り注いでくるような感覚。それはあの場にいた人になら共感してもらえることと思う。シンガーという人種は多かれ少なかれそういう所はあるのかもしれないが、だとしたら海月ひかりは「生粋」の存在なのだろう。

しーなとシュウ

最後のしーなとシュウは、もう圧巻のステージ。前2組がソロということもあり、特に歌の純度の高いステージだったのに対し、こちらは声とベースとピアノで奏でるハーモニーが心地良く、終始踊らされっぱなし。デュオという編成ながら、その音楽はじつに立体的で完成度が高い。

はぐレ企画では、これまで様々なタイプのデュオにご出演いただいてきたが、中でも今日のしーなとシュウは大変素晴らしかった。順位を付けられるものではないが、本当にプロフェッショナルな、かつ歌心に溢れたステージは感動的ですらあった。

しーなとシュウ (@cnashu) – Twitter

おわりに

歌をテーマにしたイベントを作るのは意外と難しい。「唱撃」というタイトルを冠したイベントは何年間も開いていなかった。その間に開催したイベントに優れたボーカリストが出演しなかったのかと言えばそんなことはなく、ただ機が来なかっただけだと思う。

じつは今回は完全な自分発信ではなく、しーなとシュウの方から「またツアーで東京にも行くことになった」という連絡を受けたことから始まった企画だった。それこそが機だったのだと思う。海月ひかりにも宮国英仁にも即答で出演を快諾していただき、おかげで素晴らしい一夜を作ることができた。

機会を与えてくれて、遠方から素晴らしい演奏を聴かせに来てくれたしーなとシュウ、一緒にいい歌を聴かせてくれた海月ひかりと宮国英仁、会場を提供してくれた高円寺U-hA、足を運んでくださった皆様方に心よりお礼を申し上げます。