2011年3月29日、「MUMU×小窓ノ王 ツアーファイナル」が吉祥寺のMANDA-LA2でしめやかに催された。前日まで停電するしないの問題で、アンプラグドでやるかもやらないかもみたいな話になっていたようだが、蓋を開けてみれば無事通電、通常セットでのライブとなった。
今日は色々な意味でライブを楽しめて大変満足。まず最初から最後まで(ついでに打ち上げまで)ずっといたこと自体がかなり久しぶり。内容的にも大変素晴らしかったので、これはぜひ書いておかねばと思いキーを打っている。
小窓ノ王
一番手は小窓ノ王。観る度にデュオとしての錬度が高まっている。今日の2人の演奏からは阿吽の呼吸というものを感じ取った。特に植村さんの技に感じ入った。「満月」~「月の砂漠」の流れの時が特に最高。手数も音量も抑えたドラミング。でも踊れる。
「満月」の中盤、ブラシでただタムをどこどこ叩いていたところ、大変に痺れた。「月の砂漠」では素手でスネアを叩いてエスニックパーカッションのような音を出していた。これも痺れた。静かではあったが、力が入っていた。絶対に航さんの歌を殺さない、そのためのラインがきっちり引かれたプレイ。音量やテンションだけの話ではなく、繰り返しになるけど呼吸。相手の呼吸が自然と自分のプレイに反映される。そんな印象。
主と従の関係性についても併せて語りたいが、それは天国のレポを踏まえて後述。
天国
1曲目は「地獄~道標」。本間くんが「地獄」を弾いている間、宮国さんはモニタースピーカーにもたれかかって、うっとりピアノに聴き入っている、ような体勢。やがてゆらりゆらりとボーカルマイクの前へ。いざ歌い出すとやはり存在感がすごい。今日は体調もそこそこ良かったと思われる。前回のライブより断然声が出ていた。
2曲目「さっちゃん」あたりから一気にアクセル全開で笑かしてもらった。もう「さっちゃん」と「斉藤」はマジ欠かせない。面白すぎる。打ち上げでMUMUの中根さんが「悲劇ってこんなに面白いのか」って云ってたけど、ホントそう思う。悲劇も行き過ぎると笑うしかなくなるんだよな。「さっちゃん」における躁鬱の落差はまさにマンガだし、「斉藤」は旦那を殺して楽になろうとした奥さんまでボケてしまうという救いのなさ。うーん、たまらんね。
主と従について
小窓ノ王と天国における役割で言うと、航さんと宮国さんが主、植村さんと本間くんが従になるだろう。だがその従における仕事の仕方は小窓と天国でかなり異なる(主も違うけど)。
繰り返しになるが、植村さんは相手の呼吸を巧みに読み取って、鏡のように航さんが強く出れば強く、抑えれば自分も抑えてプレイする。完全に従に徹しているが、見方を変えると完全に場を支配している。
対して本間くんは宮国さんを基本泳がせている。言葉が悪いな。とにかく気持ちよく踊らせてやる。その上で要所要所を締めて、宮国さんが曲からハミ出さないように気を配っているという感じ。
別にどちらが優れているとか正しいとかはないと思うが、今日の植村さんのプレイを観て、上手いというのは単にテクニックの問題じゃないんだと痛感した。状況に応じたプレイができること、必要な時に必要な所作ができるということが、本当に上手いってことなんだなと思った。
(仮)天国の情報 天国ライブ日程
宮国英仁(@3892hidehito)- Twitter
本間太郎(@tarowitz)- Twitter
MUMU
最後にMUMU。すっげー久しぶりに観たけど…相変わらずよくわかりませんな(笑)いや、すごいんだけどね。難しいこと平気でやってるし。いや、平気じゃないかも?珍しく本間くんが緊張した面持ちで演奏してたってのは面白い見物だったけど。
実際に生で動きも込みで聴いているとよくわかるが、音符の並びが難しいだけじゃなく、独特の「間」がMUMUの音楽の重要なファクターになっている。楽譜を見ながらとはいえ、あんな曲を弾かされるのはさぞ大変だろう。
特に細々した部分で、植村さんが本間くんの方を見ながら「おらおら、もたってんじゃねぇぞ!」と煽りながら叩いているように見えたのは気のせいか?「まったく参っちゃうよな」みたいな表情をチラつかせながらも、ちゃんとそれに応える演奏をしている本間くんもエライわねぇ。
勝手な想像だが、MUMUは植村さんが自分の好きなように書いた曲を、持てるスキルを存分に発揮して演奏するためのバンド、なのじゃないかね。少なくとも小窓ノ王を観た直後にMUMUを観ると、そう思わざるを得ない。付き合わされる中根さんと本間くんはたまったもんじゃないが、本人たちも楽しんでやってるからいいんじゃないかね。
一番大変なわりに一番平和な雰囲気だったのがMUMUだね。
とにかく良いライブを味わえて楽しかったですよ。