【当日レポ】サブカルヒステリーアワー5 ~真夏の大文化祭~@Zher the ZOO YOYOGI(2017.08.11)

笑顔の絶えない時間。一言で表現するなら、そんなイベントだった。
演じる側と観る側の双方が、全力で楽しむことに向かい合っていたような。
あの時間を多くの人と共有することができたことに、まずは感謝を。

市川へる

市川へる

今回、フロアではスクリーン上に各出演者の紹介VTRを流していた。
市川へるの紹介文曰く、

怪文章を弾き語ったり、ハードロック調の自作カラオケを用いた「殺人ディナー・ショウ」と銘打った活動を繰り広げているが、基本的に音楽活動という意識でやっている訳ではなく、あくまで現在のポテンシャルで出来る悪フザケ寄りの創作表現をマイペースに発表しているだけである

音楽に囚われないこと。この日の出演者の共通点のひとつはそこだと思っている。
もちろん皆さん素晴らしい音楽を演奏される方々なのだけれども、「私は音楽家です!」という顔をしている人がいない。音楽を奏でつつも皆がエンターテイナーだ。

市川へる

ほとんどが初見の観客の中で、人を食ったMCでペースを握るステージングは、もうソロ活動を10年くらいやっているベテランの如き風格があったし、なによりも最後に歌ったBon Joviの『Livin’ on a Prayer』が最高だった。「ジョン・ボン・ジョヴィみたいになりたかったらジョン・ボン・ジョヴィを歌えばいいんだ」という、ある意味コロンブスの卵的な発想で、しかもここに来てちゃんとした英語詞で歌い切る姿が可笑しみを倍増させていて、観客も拍手喝采。

HELL ヘル(レオニダ(Ray?Oh…Needa!!)、赤い花)(@anti_senpaikaze) – Twitter

ゴロバン

ゴロバンのステージはもう伝統芸能の域に達している。聞けばもう10年くらい新曲を書いていないらしい。メンバー紹介の曲が変わったくらいか。つまりそれだけの期間、ほぼ同じセットリストでライブをしているわけだが、どういうわけか何度観ても飽きない。

ゴロバンゴロバンゴロバンゴロバンゴロバンゴロバンゴロバンゴロバンゴロバンゴロバンゴロバンゴロバン

「良い曲は何度聴いても飽きないものだ」などという感傷的な話ではなく、否応なしに巻き込まれてしまうのだ。それぞれのメンバーが人が注目していないようなタイミングでも、常に細かいことをやっている。誰に目を向けていてもずっと面白い。曲は同じかもしれないが、一回のライブに注ぎ込まれるエネルギーは尋常なものではないはずだ。

普段より長めのステージということで、お馴染みの曲も久しぶりの曲も楽しめたオイシイライブだったと思うが、やはり定番の『告白タイム』でフロア全体が一つになって踊っている時間は最高に楽しかった。

タッカー☆ゴロバン(@gorobahn_tacker)- Twitter

ダイナマイト☆ナオキ

実は企画者として最も楽しみにしていたのが、このゴロバンからダイナマイト☆ナオキへの流れの部分である。バンドとソロで違いはあれど、絶妙な人間味で周囲を巻き込んでいく姿には近親感を覚える人もいるはずだ。

ダイナマイト☆ナオキ
ダイナマイト☆ナオキ

それにしても今日のナオキさんには参った。まだまだ自分はダイナマイト☆ナオキという男の魅力を知ったつもりになっていただけなんだと思い知らされた。

『挨拶ロック』のコール&レスポンスではゴロバンの『告白タイム』のフレーズを借用したり、臨機応変なステージングを見せてくれたけれども、それ以上に新作ミニアルバム「仕事行きたくない」から披露した『仕事行きたくない』『山の魔王の宮殿にて』には腹の底から笑わせてもらった。

他の人だったら大事故になってそうな事態でも成立させてしまう。何がそれを可能にしているのかわからないが、そういう姿を見て安易とは思いつつも「天才」という言葉を当て嵌めてしまう。この日も彼はやっぱり天才だった。

ダイナマイト☆ナオキ (@DynamiteNaoki) – Twitter

伝承歌劇団~エウロパの軌跡~

伝承歌劇団は今回のイベントのために、新作ストーリーと、この日のみ演奏するという曲を仕込んできてくれた。

平和な国に生まれた農家育ちの青年が、病気の彼女に高価な薬を買ってやろうと、家業を捨てて王国の騎士団に入る。青年はそこで手柄を上げるが、人気を妬まれて辺境へ飛ばされてしまう。
ある日、獣人の大群が攻め寄せてくるが、そこへ伝説の百人騎士団の一人である56番目の騎士が駆けつけ、危機を救う…。

伝承歌劇団~エウロパの軌跡~
伝承歌劇団~エウロパの軌跡~

途中までは、ファンタジーRPGのようにストーリー展開に合わせて、戦闘時には苛烈な、安息の時間には柔らかな曲が演奏されるわけだが、今回のヤマである「56番目の騎士」の登場シーンで空気が変わる。

56番目の騎士役として登場したのは、何とゴロバンのゴロー!それまでのシリアスな空気が弛緩して笑いが漏れる。そしてここでの曲目は、ゴロバンの人気ナンバーである「サザンクロス」。この伝承歌劇団バージョンのサザンクロスがまたカッコ良かった!アレンジひとつで楽曲の印象はこうも変わるものか。

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そのままゴロー込みで物語はクライマックス近くまで進み、ゴロー退場後にストーリー的にもフィナーレを迎えて演奏された「平和の時代」では、うっかり涙が出そうになった。歳を取るとベタな展開に弱くなる(笑)

アンコールではゴローとジョーのゴロバンコンビを迎えて再び「サザンクロス」。リハーサルも含めて今日だけで4、5回聴いたけど、全く飽きなかった。本当にこの伝承バージョンがカッコ良くて痺れた。音源化して欲しいくらいだ。

まとめ

本当に楽しい一日だった。主催者として毎回感じる、胃が締めつけられるような緊張さえもすべて吹き飛んでしまって、途中からは完全に一人の観客になっていた。

楽しい時間を作るには信頼関係が必要だと思う。企画だけでも、演者だけでもいけない。受け手である観客も、楽しみにいく姿勢が求められる。逆に言えば、客の楽しみに行く気持ちを引き出すのが企画の仕事であり、その上で実際に楽しませるのが演者の役割と言えるかもしれない。自惚れだと叱られるかもしれないが、今回は三者がそれぞれの役割が果たすことができた内容だったと思っている。

笑顔の絶えない時間を作ってくれた皆さん、どうもありがとう。
会場を提供してくれたZher the ZOO YOYOGI、フードの出店をしてくれた三月の水にも心からの感謝を。

サブカルヒステリーアワー5 ~真夏の大文化祭~@Zher the ZOO YOYOGI(2017.08.11)

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