Whereabouts Records代表・竹内一弘氏インタビュー

レーベルの今後の展望

レーベルの話に戻ると、うちのリリースの方針として、基本的にはその人のファーストアルバムしか出さないんです。既に他のレーベルで出してる人はあまり興味がないです。

――― それは今後もそう?

竹内: そうですね。ただ、「ゆいこ」の場合は2001年か2002年にメジャーレーベルからCD出してるんです。それから出産などで長期休養があって、8年ぶりくらいにWRでサードアルバムを出したんですけど、それはメジャーなので例外。

やっぱり音楽ってファーストアルバムが一番面白かったりするんですね。その人の音楽性が最もよく出ている。で、一回僕のところで出して、次やめるって言われたらそれは僕が悪いということ。基本的に良い関係だったら同じレーベルでずっと出していくだろうから。

――― じゃあWRでファーストアルバムを出した人が「またここで次のアルバム出したいです」という話はウェルカムってことですか?

竹内: もちろんもちろん。レーベルってね、僕みたいに英語も喋れないしお金も無い人が、それでも世界レベルで色々できるから面白いです。

――― 今後の展望は?

竹内: そうだな…実際もう辞めたいとも思います、お金減ってくばかりだし(笑)。でも今17枚のCDを出していて、その人たちにもう辞めますとは当然言えないし、レーベルをやる前と後じゃ交友関係が全然違いますから。まさか自分がハンガリー行って向こうのプロ・ミュージシャンたちと語れるとは思ってなかったし、想像もしていなかった。そういうことがどんどん蓄積していってるから、それが面白いですね。それを続けていくためには、やっぱりレーベルも続けなきゃ。まぁ、辞めるきっかけがないからやり続けると思います(笑)。

――― それは良かった。

竹内: それから、僕は歳取ってるけど若い人と付き合えるってのが一番面白いですね。30歳前後の人とか。

――― 可能性は別として、WRでこんな作品をやってみたい、というのはありますか。

竹内: 若者がやってる尖ったジャズみたいなの。お洒落なのじゃなくて、荒々しい感じの。そういうのをやってみたいです。

――― そちらも期待して待ちたいと思います。今日はありがとうございました。

竹内一弘 プロフィール

竹内一弘

音楽に関わるあらゆることを生業としている音楽家。
2010年にインディーズ・レーベル「Whereabouts Records(ウェアラバウツ・レコーズ)」を立ち上げ、国内外の個性的なアーティストの作品をリリースしている。

元々はロック・ギタリストであったためクラシック・ロックや70~80年代の音楽に詳しいが、昨今は DAWをベースとしたエレクトロニック・ミュージックに傾倒。自身もアーティストとして活動しておりリリースCDもあるが、アーティスト業とレーベルやその他の業務を切り離すため、アーティストとしてのプロフィールは一切公開していない。

ジャズ理論に明るく、音楽ライターとしては理論系・奏法系など多数の著書がある。採譜のエキスパートでもあり、演歌からコンテンポラリー・ジャズ まで、これまでに数えきれないほどの採譜スコアが出版されている。

自身が運営するウェアラバウツ・レコーズ・マスタリングではマスタリング・エンジニアとしても活動し、特にインディーズ・レーベル / アーティストから絶大な信頼を得ている。