【ディスクガイド】MERMORT『晴れ渡る絶望とパトス』『Polygon』

今回は、MERMORT sounds film(現在はMERMORT)の1stアルバム『晴れ渡る絶望とパトス』と、手元に届いたばかりの2ndアルバム『Polygon』を取り上げてみる。

1stアルバム『晴れ渡る絶望とパトス』

メルモの音楽は映画だ。音楽がビジュアルを想起させることは珍しくないし、そういう意図で込められた音楽作品も多々あるけれども、例えば「粉雪が舞っているイメージ」みたいな抽象的なビジュアルではなく、ストーリーが込められたビジュアルがメルモの音楽には込められている気がする。故に映画。

このアルバムに何かテーマを見い出すとすれば、暗い場所に差し込む光のようなものではないだろうか?光明と呼ぶにはつたないほどの光。もしかしたらそれはノイジーなギターと硬質なピアノの対比が感じさせる、単なる音響的効果なのかもしれないけれど、私はこのアルバムを聴くとゾッとするほど美しい光景を観たような感覚に陥って身震いする。涙が出そうになる。

1曲ごとに起承転結があるけれども、頭から通しで聴いていって4曲目の「douka」のクライマックス部分に到達すると、これまでの全部が1つの物語だったのかという読後感(敢えてこの言葉を使おう)がある。隙のない素晴らしいアルバム。

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2ndアルバム『Polygon』

続いて2015年発表の『Polygon』について。こちらはまだ聴き込んでいないが、新鮮な印象のままレビューしてみようと思う。

『晴れ渡る絶望とパトス』については映画だと述べたが、この『Polygon』は間違いなくバンドの作品だ。ポストロック的な静と動の対比が薄れ、プログレやフリージャズのような色合いが濃くなった。変態系と言ってもいいかも。

作風はがらりと変わったが、プログレ好きとしては文句なく楽しめる内容。前作が構築美を目指した映画的作品だとしたら、今作は純粋に面白味を追求した音楽的欲求が炸裂した作品というべきだろうか。

音が重い、と言ったらそれは前作もそうなんだけど、こっちの場合はそれに加えてスピード感がある(もちろんテンポの話ではない)。この2つの要素はなかなか同居しづらいと思っていたのだが、見事に同居している。

象徴的なのは3曲目の「Animarights」か。9分14秒とこのアルバムでは1番の長尺だが、4つ5つくらいの章に展開していく印象で、長さは感じさせずむしろ目まぐるしい。1曲進むごとにスピード感も増していくような構成で目が回りそうだが、こういうのをジェットコースターミュージックと言うのだろうか。

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MamiMERMORT(@mermort)- Twitter

アヴァン・ミュージック・ガイド
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神保 新(じんぼ あらた)

東京都出身。日本工学院八王子専門学校コンピューターミュージック科卒業。
その後は音楽とは別の道へ進むが、再び音楽の世界になんらかの形で関わっていこうと決意。2007年より、都内のインディーバンドやアマチュアミュージシャンを中心としたライブのオーガナイズを始める。

数年前からクイズ熱が再燃し、たまにクイズイベントに参加したり、主催イベント内でクイズコーナーを設けたりもしています。

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